小渕館長のつれづれ

5周年を迎えて

 

 アウシュヴィッツ平和博物館は今年四月に五周年を迎えます。この白河の地で私たちが活動を続けられたのは本当に地元の皆さまのおかげです。心から感謝申し上げます。

 第二次大戦時ナチスが占領地ポーランドに建設し百五十万余りの罪なき人々の命を奪った負の世界遺産「アウシュヴィッツ収容所」の惨禍を通して「いのちと平和」の尊さを、学び伝えていこうという私たちの活動の原点は、一九八八年に始まった「心に刻むアウシュヴィッツ全国巡回展」でした。

 「日本人にアウシュヴィッツの実態を伝えてほしい」というポーランド政府の意向を受け、アウシュヴィッツの遺品を借り受けた当館創設者青木進々氏は市民ボランティアによる巡回を企画しました。見学者としてだけでなく、実際に展示会を運営することで、さらに理解を深めていこうという趣旨でした。

 開催地ごとに、新聞の募集記事を見て集まった人々が実行委員会を作り自主運営する巡回展は、十年間で北海道から沖縄まで全国百十ヵ所、延べ九十万人の来場者を記録しました。県内でも一九九五年に、郡山、福島、いわきで開催しました。

 やがて、ボランティアの間から常設の博物館建設への思いが湧き上がり、二〇〇〇年には栃木県塩谷町にプレハブの展示館が開館しました。

 しかし、開館一年目に地権者の会社が破綻、移転を余儀なくされ、さらに、代表の青木氏が末期がんで余命三ヵ月の先刻を受け一年後に他界しました。

 絶体絶命の中、博物館を存続させようとする支援者の輪が広がりました。その様子をNHKなどが報道してくれたおかげで、全国から支援の声があがりました。

 白河の篤志家からは移転地の提供を受け、長野の篤志家の尽力で古民家の展示館が完成。二百人を超えるボランティアの協力もあって、二〇〇三年四月に白河市に開館することができました。以来、現在に至るまで、館の通信や催し等々は地元の皆さんの協力なくしては成り立たないものでした。

 移転が急だったため、地元への十分な説明ができずに大変失礼を致しましたが、にもかかわらず、多くの方々が、当館の趣旨に賛同され、「夏まつり」や「アイスキャンドル」などに参加していただき感謝の念でいっぱいです。ぜひ、当館にお出かけください。

 今後は、「平和」と言えば「福島」と連想されるような全国へ向けた平和(希望に満ちた心温まる社会)の発信基地として地域の振興に寄与していきたいと願っています。「アイスキャンドル」なども地域おこしの一環としてもできるよう、皆さまのお知恵をお貸しいただければ幸いです。

 私も執筆も今回で最後となりました。皆さまのご活躍とご多幸を願っています。ありがとうございました。

2008年3月8日 福島民友新聞に掲載「みんゆう随想」
アウシュヴィッツ平和博物館長 小渕真理