小渕館長のつれづれ

アイスキャンドル

 

 博物館では、毎年、一月になるとアイスキャンドル作りが始まります。アイスキャンドルといっても、氷で出来た火屋を作り、その内側に市販のロウソクを灯すのです。

 透き通った氷を通してゆらめく炎は、とても幻想的です。このアイスキャンドルを、冬の一夜に千個近く灯すのが「アウシュヴィッツ解放記念アイスキャンドル」なのです。

 アウシュヴィッツ強制収容所が解放された一月二十七日は、欧米では特別な記念日。犠牲者を追悼するだけではなく、差別や人権侵害に反対するアピールも行われます。「アウシュヴィッツ」を、普遍的な人類への警鐘としてとらえようとする取り組みです。

 この特別な日に、当館でも何か催しをしたいと思っていましたが、良いアイデアが浮かびませんでした。そんな折、長野県在住の会員の方から、「アイスキャンドルはどう?」という提案があったのです。「アイスキャンドル?」そのような言葉を聞くのも初めてで、いったい何だろと、一瞬困惑したのを覚えています。

 アイスキャンドルは、長野県諏訪市の冬の風物詩です。地元の青年会議所を中心に、市民が自作のアイスキャンドルを、寒中の諏訪湖畔に持ち寄って、一斉に点灯するのです。

 町おこしで始めたイベントですが、参加者・団体が年々増えているとのこと。学校や職場単位で競い合ったりしているようです。

 神戸ルミナリエや仙台光のページェントなど、電飾を使ったイルミネーションが盛んですが、アイスキャンドルによる、いわば「手づくりの光」は、現代人が忘れている「こころ」の「温もり」を象徴しているようです。「いのちと平和の博物館にぴったり」「よし、やろう!」と一同やる気満々。しかも、氷の火屋は牛乳パックと空き缶で簡単に作れるのです。

 県内でも寒さが厳しい博物館の地元白河はアイスキャンドルには格好の場と思われました。が、一つ大きな問題がありました。風です。無風の諏訪と違い、那順山から突風(那須おろし)が吹くので背の低い火屋では、ロウソクが消えてしまうのです。実行委員の方々の試行錯誤が続きました。そして、苦心を重ねた末に、「風にも負けない、諏訪にも負けない」特製の氷製火屋がついに完成したのです。

 来年のアイスキャンドルは一月二十六日(土)です。ぜひ、平和への願いを込めた「光の祭典」を見に来てください。当日午後五時から点灯を開始します。自作のアイスキャンドルも大歓迎です。作り方など問い合わせは、当博物館(電話0248-21-2108)まで。

 ゴスペル演奏やボランティアが心を込めて作る温かい食べ物や飲み物の模擬店もありますので、どうぞ、楽しみにいらしてください。では、会場でお会いしましょう

2007年12月29日 福島民友新聞に掲載「みんゆう随想」
アウシュヴィッツ平和博物館長 小渕真理