小渕館長のつれづれ

平和の夏まつり

 アウシュヴィッツ平和博物館では、毎年7月末の土曜日に「平和の夏まつり」を行っています。原爆の日や終戦記念日を前に、すべての戦争犠牲者を追悼し、平和の思いを新たにしようという趣旨の集いです。

今年で5回目を迎えるこの「夏まつり」では、毎年、音楽愛好家や伝統芸能保存会の方々が自慢の演技を披露します。これまでに、沖縄のエイサー、秋田県八郎潟の願人踊り、地元有志のフラダンス、朝鮮の民俗芸能サムルノリなど、多彩な舞台がまつりを盛り上げてきました。

 まつりのメーンは、毎年同じ、「この子たちの夏」という朗読劇です。広島・長崎の原爆を扱ったこの朗読劇は劇団「地人会」の台本を使用し全国各地で自主上演されています。当館でも、毎年4月ごろから稽古を始めます。被爆者の体験をもとに書かれた台本は、一言一言が平和への祈りに満ちています。

 唯一の被爆国として、日本は核兵器の廃絶を世界に訴えてきました。広島・長崎からの平和のメッセージは世界中に影響を与えています。一方、あまり知らされていない事実もあります。日本の原爆開発です。

 戦争中、陸軍は理化学研究所に、海軍は京都帝国大学に委託し原爆の開発を行っていました。開発には日本を代表する物理学者が集められ、中には、戦後ノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士もいました。

 本県石川町の鉱山でも、微量のウランが含まれる鉱石を地元の中学生が学徒動員されて採掘していたといいます。もちろん、原爆の材料とするためでしたが、研究施設も空襲で破壊されたため、開発には至らず終戦となりました。わが国は唯一の被爆国であり、その意味では犠牲者です。

 でも、一つ間違えば原爆を投下する側になる可能性もあったという事実にも真摯に向き合い、「敵に勝つためには手段を選ばないという状況をつくってしまう戦争の恐ろしさ」を説くことこそ、「ヒロシマ・ナガサキ」を「真の平和のメッセージ」たらしめるのではないでしょうか。そうあってほしいと、切に願うものです。

 さて、「夏まつり」に話を戻しましょう。平和や人権といった硬い、重い、と敬遠されがちなテーマを扱う当館でも、たまには思いっきり楽しむときもあります。朗読劇や舞踊や音楽のアトラクションに加えて、手づくりの夏野菜の健康カレーや当館自慢の特製やきそばなど、ほかでは食べられないおいしい模擬店もあり、真夏の一日を楽しんでいただける催しです。

 肩ひじ張って、しかめっ面してても、平和は訪れません。ぜひ、楽しい当館の「夏まつり」にお越しください。待ってまーす。「アトラクションも、こうご期待!」

★「平和の夏まつり」は7月28日、詳細は電話0248−28−2108まで。

2007年7月7日 福島民友新聞に掲載「みんゆう随想」
アウシュヴィッツ平和博物館長 小渕真理