小渕館長のつれづれ

いのちと平和

 これから一年にわたって「いのちと平和」をキーワードに、私たち博物館活動や世の徒然などを寄稿させていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 私たちアウシュヴィッツ平和博物館は、2003年4月に白河市にオープンした民間非営利の博物館です。この度、4周年を迎えることができましたが、地元福島県、そして白河市の皆さまのご理解とご支援の賜物であり心より感謝申し上げます。

 当館の中心展示は「アウシュヴィッツの記録」です。アウシュヴィッツとは、ナチスドイツが占領地のポーランドに造った最大規模の強制収容所で、150万人余の尊い命が奪われた場所です。現在、収容所の跡地はポーランド政府が国立博物館として当時のまま保存し、一般公開しています。

 当館の展示室はこのポーランド国立アウシュヴィッツ博物館から提供を受けたものです。犠牲者の遺品や記録写真などの展示品からは、戦争の爪跡と共に命の重さを感じます。それはまた、私たちをとりまく様々な問題を見つめ直すきっかけにもなります。

 例えば、今、問題となっている「いじめ」の要素がこのアウシュヴィッツには凝縮されています。その意味で、アウシュヴィッツを学ぶことは、私たちを取り巻く身近な問題を解決するための格好の教材となるのです。ぜひ多くの皆さまに、当館を見学していただきたいと願う所以です。

 当館では様々な企画展も行っています。4月21日からは4周年記念企画として「イラク写真展」を開いています。国内外で活躍中のフォトジャーナリスト豊田直巳氏がイラク戦時下の庶民の姿を写した貴重な写真です。

 イラクでは、日本人の外交官や民間人も犠牲になり、自衛隊の派遣や人質事件など、イラク戦争は私たちに直結した問題となっています。陸上自衛隊が駐屯したサマワには、本県からも多くの若者たちが送られ、残されたご家族が大変心労されたことも記憶に新しいことです。

 開戦以来4年、イラク情勢は悪化の一途をたどり、自爆テロや武装勢力の攻撃などが頻発しています。しかし、マスコミの報道は「犠牲者数の報告」に終始し、戦争の実態が見えにくくなっています。

 今回の「イラク写真展」は、戦時下の人々の「日常」を体感できる貴重な機会となります。空爆直後に出会った子どもの不安げな表情、貧しくても仲の良い姉妹の笑顔、平和を祈る人々。写真は幸福を渇望する魂の叫びです。

 それは、格差や閉塞感に悩む私たち自身の鏡とも言えます。「イラクの今」を知ることは、私たち全人類にとって希望を見いだす第一歩となります。ぜひお越しください。同写真展は5月31日まで開催しています。(お問い合わせは、電話0248-28-2108、博物館事務局へ)

2007年4月28日 福島民友新聞に掲載「みんゆう随想」
アウシュヴィッツ平和博物館長 小渕真理