小渕館長のつれづれ

東京ミッドタウン

 六本木にオープンした東京ミッドタウンに行った。5つの低高層ビルがここかしこでつながっている仕掛けで迷子になること間違いなし。どうして、こんなに分かりにくい構造にするかと考えてしまう。おきまりのオフィス街、ショッピングアーケード、イベント広場、美術館などが入っている。六本木ヒルズの兄弟分だ。近くに国立新美術館もオープンした。平日にもかかわらず大混雑、東京には暇な人がたくさんいるんですね。

 私は、生まれ育ち40年近く暮らした東京を離れ8年、白河では5年の歳月が過ぎ、たくさんのことを学んだ。というよりも教えてもらった。虫・鳥・動物などのこと、草花・樹木など植物のこと、生きる糧となる食物のことなどまで。すべて生命をつなぐことに欠かせないものだ。しかし、こんなにも知らないことが多かったとは! ただただあきれ愕然とした。小学校の理科の教科書やテレビでしか見たことのなかった世界が、現実となって、目の前に現れた。

 感動とともに戦いも始まった。ある夜の小さな訪問者には驚かされた。台所に掛けていたタオルがない。数日後、冷蔵庫の後ろにあるモーターの横に丸められて発見された。子育てをするネズミの巣の材料に最適とされたのだ。柔軟な発想に感激した。

 東京の街のネオンと臭い空気が好きだった。と言うより慣らされていた。しかし、今は違う。みちのく(未知の奥)、白河の気候・風土・慣習の違いに、ようやく少し慣れてきた。さまざまな、「いのち」の営みを肌で感じながら生活することは、「自分をやさしくしてくれる」と感じる。なぜなら、生き物に対し慈しみの気持ちや思いやりを持てるようになるからだ。

 東京ミッドタウンで働き、夜は六本木の街に繰り出す。こんな生活をしている人がいるとすると、経済生活は満ち足りているのだろう。しかし、時の過ぎるのは早い、実り多い人生を送っているのだろうか、と疑問を感じるのは、私だけであろうか?

 大人が「いのち」の営みを心に刻み、他者への思いやりをもつようになれば、社会のいじめが減り、次世代の子どもたちを救う手助けにならないだろうか!

平成19年5月15日 河北新報に掲載「微風・旋風」
アウシュヴィッツ平和博物館長 小渕真理